『はじまりの樹』 津川絵理子
歌集でなく句集。図書館で借りた。
どうして予約を入れたのか定かに覚えていないのだけれども、おそらく「火花」を読んで又吉直樹と俳句に興味を持ち、いくつか読んだ俳句関連の本の中で紹介されていたのではないかと思う。「芸人と俳人」かな?句集を読んで好きな10句を選ぶという章があり、それでこのブログを始めることを思いついたんじゃなかったっけ。
まぁそのようなわけで、初めて読んだ句集が「はじまりの樹」である理由はそこに尽きるんだけれども、俳句にはかならず季語がある。ゆえに句集を読むことは季節を辿ることである。一章の中で季節が移りゆくのはしみじみと良いものだ。場面を切り取る、というより掠め取る感じだな。切れ味のするどい刃物、料理なら柳刃包丁でキリッと刺身を盛り付ける感じでしょうか。・・・下手な喩えはやめて好きな句を挙げるとします。
句集って、いろいろ読んでみたくなったんだけれども、図書館の書架を眺めていても俳句の作り方入門みたいのばっかりなんだな。作ろうとする人が多いということか。そういうのより、なんでもいいから句集を片っ端から読みたい。なにしろ短歌より短いし、読めない漢字やわからない句をすっ飛ばしても怒る人がいないと思うとほんとうに気が楽で(爆)さくさく読めてしかも楽しいだけだから(いろいろすみません)。
綾取や十指の記憶きらめける
ふらこ漕ぐ空より眼はなさずに
ぜんまいの眠れるままを採つて来し
風鈴を鳴らさずに降る山の雨
木犀やバックミラーに人を待つ
群がつてひとりひとりや日記買ふ
エレベーターどこかに止まる音日永
無月なり鉄のにほひの駅に着き
日向ぼこ大樹の影が触れてくる
飯蛸の炊かれて頭たちあがる
行く春や海みえずして潮の香
新豆腐のせててのひらおろおろす
助手席の吾には見えて葛の花
地下道のこんなところへ出て九月
切り口のざくざく増えて韮にほふ
擦り減りし駅の階段十二月