『暮れてゆくバッハ』 岡井隆
このブログで取り上げる最初の歌集を、岡井隆さんの「暮れてゆくバッハ」にしようと思う。
不勉強なのをあらかじめ謝ってしまいたいのだが、「未来」の会員だというのに岡井さんのことを(経歴やこれまの歌集など)うっすらとしか存じ上げないというのも甚だよろしくないことと自覚はしているので、これから勉強します、とこの場で誓うことにする。
いや、勉強しなきゃというよりは、やっぱり「知りたい」だと思う。
短歌を始めて未来に入れば、斎藤茂吉からのアララギの系譜をどうしたって意識するわけです。近藤芳美がいて、岡井隆さんがいて。岡井さんと同じ時代に生きて短歌をやっているって、それだけでなんかすごいことだなぁ(雑な言い方になるけれども)と思うわけですよ。歴史って紐解くものじゃなくて今まさに編まれつつあるものなんだなと。
まぁ、現時点でどうしようもなく無知な私のどうでもいい無駄話は置くとして、好きだと思った歌を引かせていただくことにする。エッセイの語り口も、歌に添えた花のスケッチも、好きだなぁと思う。
いやッといふ人は居ないが好きといふ人は夕顔の白さで並ぶ
休みなく咲き続けたるくれなゐを心の底に置きて昼寝す
思想なんて死語を使ふのはどうかなあせめて〈詩想〉と緩めてみたら
後ろから道を迫つて来るバスにおびえてしまふ 紅梅の花
るり色を出さうとすればパレットは濁るばかりだ 如月ちかく
複雑な顔をしてゐた冬だつたそのかれが今去らんとぞする
思想家だ、思想史家だとかしましい。呼名は美しい家具に似てゐる
梅の花を見に行つてから二時間だ入り口つていつも昏いんだなぁ