れんげのはなかざり

読んだ歌集・歌書についての感想を書くブログ。無駄話多め。

『念力ろまん』 笹公人

加藤治郎さんが学年主任なら、笹公人さんは隣のクラスの担任。でも選択科目の関係で笹先生の授業は受けられないのよねー、残念、みたいな感じ。

去年はNHKで「念力家族」がドラマ化されたのも見ていた。歌集の世界観がそのままドラマになるっていいもんですね(なぜか最終回を見逃してしまってがっくり)。それと私がよく行く公立図書館では笹さんの歌集や著書をなぜかよく見かけるので、借りて読んだものもある。

  

念力ろまん (現代歌人シリーズ)

念力ろまん (現代歌人シリーズ)

 

  

師匠もそうだけれど、笹さんは私よりもお若いんですよねぇ。ノスタルジー満載なワードがいくつもあらわれるので、歳のことを知らなかった頃、私より上のような気がしていた。そうか、「ビューティフルネーム」って私が小学校の高学年(意味なくぼかしておく)の頃の歌だから、笹さんはそのころ園児だったわけですね。(でも私、紅茶キノコは知らない)

で、そういう懐かしさも相俟って、昭和という時代の垢ぬけなさに思いを馳せながらしみじみと茶を啜っていると、不意打ち喰らって咽たりするんですよ。ああ抒情。

 

 

夏の夜の団地の部屋のカーテンに海を想えば海は見えくる

 

何時まで放課後だろう 春の夜の水田(みずた)に揺れるジャスコの灯り

 

網駕籠に野菜盛られて居酒屋は邪馬台国の宴のごとし

 

ゴダイゴの「ビューティフル・ネーム」脳内にかけながら見る園児の散歩

 

本尊なき御堂のごとき淋しさに耐えられるのか四月のアルタ

 

ランドリーのみどりの椅子に腰かけて中央線のしっぽ見送る

 

井の頭の池干上がればあるだろう自転車・カミツキガメ・小春日の恋

 

砂漠で見る幻のごとローソンの青き看板灯りていたり

 

運転手も家族もみんな立っている人生ゲームの外車(コマ)の静けさ

 

担任のダジャレ無視する乙女らにMONO消しゴムの角の鋭さ

 

シャンプーの容器の底に黴見えて盲愛に似た夏が終わりぬ